第23回 研修を10倍おもしろくする方法
前回に続いて企業研修について述べよう。
ある大手企業での出来事。トライアルセッション後の2回目のセッション、会場に集まった参加者に人事部長が話を始めた。
「えー、このセッションは、わが社で提供している研修には珍しく、参加者から大変高い評価を頂いているものであります」
思わず吹き出しそうになったのは私だけで、参加者は黙って聞いていた。褒めていただくのはありがたいが、それ以前に「なぜ、評価の高くない研修を提供し続けてきたのだろうか?」という疑問が沸いてくる。
一方、「いやっー、せっかく息抜きができると思っていたのに、この研修は疲れますね!」という率直なコメントをくれた参加者もこれまで少なくない。これまた、「研修は息抜き」という前提が聞こえてきてしまう。
さすがに、このメルマガの読者の各企業ではこのような「古き良き時代の?息抜き研修」を行っているところは少ないと思うが、大競争時代と言われて久しくなる今でも、上記のような企業が存在するのも事実だ。
そこで、企業研修をおもしろくする方法を紹介しよう。別におもしろおかしいことをやるという意味ではない。社員も組織も活性化することが求められる時代の中では、参加者を活性化できないような研修は予算の無駄遣いだという意味だ。では、思うところを列挙する。
1)研修の目的、成果を明らかにしてから参加者、講師を決定する=>順番は逆ではない。つまり、「とりあえず、●●先生を呼んで」「一応、 部長を集めて」ではダメ。
2)場所を甘くみるべからず=>あくまでも目的、成果にベストな場所を選ぶべし。社内大会議室では普段の延長的発想から抜け出すのは難しい。経費を削って、効果がなければ研修の実質収支はマイナスと認識すべし。
3)会場では飲み食い自由にすべし=>参加型のセッションはこれがグローバルスタンダード。雰囲気が変わる。「飲食物の持ち込み禁止、でも寝ていい」は日本の大学と同じ。
4)机の島は学校形式をやめるべし=>「ハ」の字のように、正面に向かった方を斜めに中にする。こうすると、全員の顔が前に向きやすい。学校形式は死角が増えるだけではなく、カタイ感じになりがち。
5)講師を「先生」と呼ばせない=>「先生」と呼んだとたんに「先生が言っているから、」と思考は止まる。(呼ばれた方も止まる?)社内でさんづけなら、なおさら。講師とのインタラクションが良くなる。
6)3秒ルールのすすめ=>「沈黙は禁」を徹底する。3秒以内に反応を示すことを参加者に求める。
7)発言の遠慮は無用=>参画型セッションの原則。年次や部門間の遠慮が働かない工夫を講師と参加者に求めよ。
8)むきにならず、根に持たず=>遠慮がないのは多いに結構。ただし、意見交換をしているのであって、口論ではない。対話(ダイアローグ)を心がける。
9)前提交換のすすめ=>意見がかみ合わないのは、前提がかみ合っていない場合。ところが、前提は聞こえにくい。前提交換が対話の必須ステップ。
10)フィードバックは学びのもと=>前回で述べたとおり、セッションのフィードバックは参加者、事務局、講師が共有する。
さて、上記に盛り込んでいないが、フリップチャート、ホワイトボードなどに「書きとめる」作業も重要である。これについては次回紹介したい。