第20回 思考の習慣を点検しよう
国語力、話力と基本的と言えば、基本的な問題を取り上げてきたのだが、さらにその原因を探っていくと、考える力、思考力について触れざるを得ない。
2003年、実施してきた企業研修を数えてみたら、105回、162日であった。内容について大きな変化は、グローバル経営、企業変革、リーダーシップというこれまで行ってきたものより、圧倒的に増えてきているのが、「思考力強化研修」である点だ。
これは、この4、5年前から行っているのだが、経営のフレームワークを学ぶ前にファンダメンタルな思考力を鍛える必要性を痛切に感じ、またクライアントのニーズから提供し始めているのだが、昨年はこのタイプの研修が全体の4割を占めていた。
対象は新入社員から役員候補まで、業種はハイテクメーカー、製薬会社、食品、自動車、金融、そしてコンサルタントも含むさまざまな業種業界にまたがる。参加者に「考える課題」をいろいろ投げかけ、その答えからさらに議論を展開していくと、参加者それぞれの思考のくせが一層きわだって見えてきた。中には、創造力豊かな考え方、鋭い分析力を発揮する人など、効果的に思考力を発揮する人もいる反面、「思考の生活習慣病」とおぼしき症状の表れている人も少なからず見てきた。
「思考停止」ということばがかなり聞かれるようになってきたが、もう少し分析してみると、その根底には次の「思考の生活習慣4大病」があると見た。
1 思考の放棄症:「これだけの情報では無理ですよ。」などと言って自ら考えることをやめてしまう
2 思考の依存症:「だって、社長が言ってますよ」と人の頭に頼ってしまう
3 思考の歪み:推論の過程にムラや無理のある
4 思考の偏り:特定のことについては効果的に推論できるが、ちょっと専門分野がそれると思考力が機能しなくなる
この4つの症例がさまざまな企業で、業種、年齢、性別、部門の違いを超えて見られた。
さて、そんなことを考えている時に「生活習慣病」の名付け親、聖路加国際病院理事長、日野原重明氏の本を読んでみて大きなヒントを頂いた。「生活習慣病」の原因と対策が「思考の生活習慣病」にもあてはまるのだ。それもそのはず、同氏が言われているように「習慣が心と体をつくる」とすると、まさに「思考も習慣によってつくられる」わけだからである。つまり、思考の習慣を点検することが、この症状を直す第一歩になるのだ。
思考の「歪み」や「偏り」はだれにでもある。私もその点では人に負けないだろう。自分の思考習慣の点検をし、思考を活性化するために効果的な習慣を身につけさえすればよいのだ。
この内容を著した拙著「考えるプロがあかす、思考の生活習慣病克服法」は講談社から2月下旬に出版されるので、興味のある方には是非お勧めしたい。