第19回 「人が寝てしまう」話し方
国語力に関連して、ちょっと気になることがある。話力のない管理職者、役員があまりに多いのではないだろうか?話術の巧拙ではない。わかりやすく言えば、聞き手が睡魔に負けてしまうような話し方をするマネジャーのことだ。
私が行う企業研修やワークショップの前に挨拶を行う幹部、経営トップを少なからず見てきたが、参加者にやる気を出してもらうために話しているはずが、むしろセッションのトーンダウンになってしまうというケースが少なくない。
彼らの話し方に共通点がある。聞き手の理解度を無視して話す、単調に話す、1つの文章を区切らずに、長々と話す、関連のない喩え話をする、などである。
これらはちょうど、先日開催したJMAM人材教育の公開セミナー「変革ファシリテーターの技術」の中で紹介した「話し方の致命的なミス」にも該当することだ。端的に言えば、「聞き手不在」の話し方であり、独りよがりの話し方でもあり、そして付加価値のない話である。
何もファシリテーターに限らず、このような話し方では聞こうという集中が続かず、眠くなってしまうのは無理がないということになるだろう。
読者の皆さんもこれらが当てはまる職場の「反面教師」が目に浮かぶのではないだろうか?
一方、学ぶべきロールモデルも、多数ではないものの確かに存在する。ある日本企業の人事担当の役員もその1人だ。先日、研修に参加した20名のシニアマネジメントの前で90分間について、経営トップの一翼を担うシニアマネジメントとしての役割について問題提起をして頂いた。私は、1年前に話を聞いているのだが、それでも引き込まれるものであった。参加者も集中しながらメモを取っていた。
そういえば、彼に限らず人を引きつけられる話力を持った経営者が数名浮かんだ。今度は彼らの共通点をあげてみよう。
●まず、話すべき内容について、「伝えたい」という強い熱意を本人が持っている
●自分なりの明確な解釈があり、ことばが自分のものになっている(借り物ではない)
●聞き手をしっかり見ながら、働きかけている
●自分の実体験を、自慢話ではなく、共有したいレッスンとして語っている
●上から下へというスタンスではなく、聞き手を巻き込もうという配慮がある
●率先垂範を心がけているので、聞いている側がしらけない
●話術に必ずしも長けているとは限らないが、聞きやすい話し方ができている
以上を見ると、「話術よりも話力」と言えよう。リーダーの要件として、「話をしている時に相手が寝ていない、聞こうとしていること」という項目を入れるとわかりやすく、なおかつリーダーの資質を表せるのではないだろうか。
「たかが話し方」とは思わない方がいいだろう。カルロス・ゴーン氏は言っている。「言葉は実績によって判断される」と。
聞き手は話し手を見抜けることを忘れてはいけない。