第15回 スキルとしての英語習得のヒント(3)

「英語でビジネススキルの向上」を目指すヒントの第3回として、英語力とビジネススキルの向上を同時に行うやり方について紹介しよう。

最初に切り口として、恐らくこのメールマガジン読者にはなじみのある スキルの3つの分類、モノやカネを扱うテクニカルスキル(専門能力)、 ヒトを扱うヒューマンスキル(対人能力)、そして情報や概念を扱うコンセプチュアルスキル(概念創造能力)に基づいて見てみよう。

まず、テクニカルスキルであるが、前回触れたように業界固有の専門能力があり、これは特に知識として習得すべきことが製薬業界、自動車業界、保険業界など、各業界で異なるものがある。加えて、経理、人事、営業という機能別の専門能力もある。

業界と機能、両方の側面から、テクニカルスキルの強化として、日本語と英語の両方で身につけることが重要だ。外資系企業に勤めている方はすでに行っている方は多いだろう。

逆に外資系企業へ転職を考える方は、ビジネス英語を学ぶ時の重要な優先順位になるのが業界と機能のテクニカルスキルだ。具体的な習得法として、英語で書かれているAnnual Review(年次報告書)、業界の専門誌などを普段から目にするところから始めて、必要に応じて英語で書かれている専門書を読むことを進めたい。英語で吸収すればより広く、深くテクニカルスキルの強化になるわけだ。

次にヒューマンスキルであるが、基本的なコミュニケーション能力はもちろん、チームワークや組織をまとめるリーダーシップまで含まれる。ヒューマンスキルは業界や機能の違いよりは、むしろ置かれた立場、役割によって求められるスキルレベルが決まってくる。チームリーダーを勤めるのか、チームメンバーなのか、人事考課を行う立場か、否かとでは変わってくるのだ。

特に、日本人にとって重要課題は、均質ではない多様なメンバーで構成されるチームや組織をまとめることができるヒューマンスキルの習得だ。モデルとなるリーダーの言葉を通して、必要な考え方とスキルを学ぶことができる。お勧めしたいのは、意識しながら、リーダーの言葉から学ぶことだ。これは映画、テレビなどのメディアを駆使すれば、英語環境で仕事をしていない人にもできる。私自身もアメリカにいたころは、リーダーに関連する本のオーディオテープをかなり聴いていた。

最後にコンセプチュアル・スキルだ。組織全体を見ながら、各機能や要件の関連を見ぬいたり、戦略を考えたりする場合はコンセプチュアル・スキルが欠かせないのだが、ビジネス環境が複雑になればなるほど、そして変化が激しくなればなるほど発揮しなければならない。その理由で、いまや一部の経営トップだけではなく、あらゆるビジネスパーソンにコンセプ チュアルスキルが求めれられており、その育成が急務なのだ。実は、コンセプチュアル・スキルを伸ばすうえでも、英語は大いに役立 つのである。

(次回に続く)