第14回 スキルとしての英語習得のヒント(2)

前回に続いて「英語でビジネススキルの向上」を目指すヒントを紹介しよう。

「英語に対する強迫観念」を捨て去り、「ことばは生き物」として英語を学ぶことが重要と述べた。それは「知っている、知らない」というknowingの英語から、「自ら考える」thinkingの英語への転換である。

しかしそうは言っても、英語でビジネスを行うために必要な知識(knowing)も無視できない。そこで、必要な知識を効果的に身につけるポイントを述べよう。

ひとことで言えば、それは、考えながら知識を増やす (knowing through thinking)ことだ。英語に取り組んでいる人たちを見ると、効率の悪い学び方をしている人が多過ぎる。知らない単語に出会うとすぐ覚えようとして、やみくもに、単語の丸暗記をするというパターンだ。

ことばは生き物である以上、知らない単語に出会うのは当然なのだ。ところが、いまだに受験勉強の悪癖が抜けずに、使用頻度とか、その「ことばの意味」を考えずに「単語の訳」を暗記しようとしてしまう。

これは「考えずに知識を増やす」(knowing without thinking)やり方で、効率が悪いだけではなく、英語力アップをむしろ阻むことがあるのだ。

NHKの番組で「一語一訳は思考停止の始まり」と触れたように、ことばは使われる環境によって変化するので、状況判断をしながらことばを学ぶことが欠かせないのだが、それがなかなかできていない。

そこで、ビジネス英語を学ぶ時の優先順位を確認することをすすめたい。

最初に自分のいる業界だ。業界:日本語でも業界が異なれば、使われることばも変わってくる。業界が異なればテクニカルタームも異なるし、覚えるべきことばが変わってくるのだ。

次に職務機能、つまりJob Functionをもとに考えることだ。人事の人と財務の人では専門領域が当然異なる。それぞれの分野で英語の専門誌を読むと 必要な語彙は飛躍的に増えるのでおすすめしたい。

最後に自分の役割を考慮したい。担当者が使うことばと管理職者、事業の責任者それぞれの役割でことば使用頻度は変わってくるわけだ。部下を持つ人と持たない人、チームをリードする人と一参加者では求められる能力が異なり、コミュニケーシ ョンスタイルも変わってくるのだ。

以上の3つの切り口を参考にすると、それぞれビジネスの現場で、どのようなビジネス英語を学ぶべきかという優先順位が明らかになるだろう。

次回はさらに、英語力とビジネススキルの向上を同時に行うやり方について触れたい。