第13回 スキルとしての英語習得のヒント(1)

前回、NHK教育テレビ、「実践・ビジネス英会話」の番組講師を担当することを紹介させていただいたが、今回英語の課題について触れたい。

最初に、私が英語とどのようにつきあってきたのか、述べておきたい。

学生時代に棒術や空手などを行う武道団体に出入りしていたことから、海外からの練習生と多少の日常会話は使っていた。しかし、その程度では ビジネスでは使いものにならない。

意識的に英語を鍛えようとしたのは外資系企業、アリコジャパンに入社してからだ。ここで7年間働いている時に自らの英語力の限界とまた英語を使うことによって広がる可能性の両方を痛切に感じた。それでも、おそらくその後の「高密度体験」のなかでスキルアップを余儀なくされた部分の方が大きいと思う。

90年に渡米し、ビジネススクールでグローバルマネジメントを学び、そのままシリコンバレーにあるコンサルティング会社で、立場上英語でも何とか仕事をこなし、英語で私の最初の本「Transcultural Management」を書き上げた5年半の体験だ。この間に英語でファシリテーションを行うセミナー、オフサイトセッションを200回は経験した。

つまり、スキルアップの鍵は高密度体験と継続学習の組み合わせという持論は私自身試してみたことなのだ。帰国子女でも、英語の専門家でもなく、33歳になるまでは日本に居た私でも何とかやってきたことなのだ。この2つを組み合わせれば、だれでもスキルアップは可能であると確信しているし、英語力も例外ではない。

さて、NHK教育テレビの番組で当初から強調しているのが、単に「英語を覚える」のではなく「英語でビジネススキルの向上」を目指すものである点だ。そのためにやらなければならないことが3つある。

まず、「英語に対する強迫観念」を捨て去ることだ。日本人の多くが英語に対して根強いコンプレックスを持っている。学校で時間をかけたわりにはうまくならないと嘆く人は多い。私も同感だ。しかし、そのコンプレックスが強過ぎて強迫観念となり学習障害になっているのだ。いま、グローバルビジネスで使われている英語は英語でも国際英語で、われわれ日本人も国際英語のネイティヴスピーカーであることが理解できればこのコンプレックスと決別できよう。

次に「ことばは生き物」として英語を学んだことだ。つまり、ことばは使われる環境によって変化するということをしっかり捉えることだ。この事実を無視して、「ことばは固定的な物」として捉えた学び方では、なかなかことばを使いこなせない。単語や熟語の「丸暗記」はまさにこの学び方であり、この受験勉強と同じアプローチをとれば結果は明らかであろう。

われわれは日本語を学ぶ時には、自然に状況や立場に即した使い方を学んできたのだ。英語でもそれを行うことだ。単語や表現を覚えるのが悪いのではなく、それらが使われる状況を知らなくては、効果的に英語を学ぶことはできないのだ。

最後に英語でビジネスを行うための必要な知識がある。これについては次回、述べたい。