第3回 「"うねり"と"はやり"を見抜く目を持つ(その2)」
今回はうねりを見ぬくコツについて述べよう。それは次の3つの軸に集約できる。
●周辺視野を広げる = 広さの軸
●“氷山の下を意識せよ” = 深さの軸
●歴史に学ぶ = 時間の軸
まず、広さの軸から始めよう。
大リーグで活躍するイチローのおかげで、動体視力、つまり移動する目標物を追い続ける能力ということが広く知られるようになった。
一流のスポーツ選手に求められる目の能力は、変革期を迎えたビジネス人に必要な目にも通じるところがある。動体視力と同じように重要なのが周辺視野、つまり目標物を見ると同時に周りの状況を認知する能力だ。
この周辺視野はうねりを見抜くうえでは欠かせない。大局観が求められ、これは広さの軸である。
次に、深さの軸である。
よくたとえで使われる氷山のモデルを頭に置いておくとよい。目に見える部分より、見えない部分の方が大きいとの自覚があれば、 現象から何が導き出されるのかを考えるようになる。
例えば、いまから10年近く前の1993年、社員850名の任天堂が社員48,000人(当時)の松下電器を経常利益で抜いたのだ。
この事象を見て「ゲームブームの影響だ」と言った人もいたが、彼等は「うねり」を見ていなかったのだ。
モノづくりから知識ベースの付加価値へ、産業構造の転換という、いま盛んに言われる「うねり」はこの時既に現れていたのだ。
最後に時間軸、つまり歴史から学ぶものについて触れておこう。
これには2つの視点が重要だ。繰り返されるものと加速度的に変わっていくものへの認識だ。
「いまどきの若者は」というセリフは4000年前、エジプトのパピルス草にも書かれていたし、紀元前8世紀、ギリシャ時代にも言われていたことだ。
つまり、歴史のなかで繰り返されてきたことだ。
一方、加速度的に変化しているものがある。1492年は、コロンブスのアメリカ大陸発見の年と覚えた読者もいるだろう。
ところが、コロンブスより前にアメリカ大陸発見をしていた人達がいる。
バイキングだ。しかし、あまり知られていない。史実としてはコロンブスの方が圧倒的に知られている。
原因はIT技術だ。15世紀半ばに登場したグーテンベルグの活版印刷がコロンブスの発見を一機に広めたのだ。そして、世界最初の多国籍企業、 インド会社設立は1600年。IT革命とグローバル化の相互に影響しあってきた大きなうねりなのだ。
このように、3つの軸を組み合わせてみるといろいろな発見がある。夏休みの間に学生時代の教科書をひっぱりだして、「うねり」を読み取る練習をするのもいいだろう。