経営幹部に必要な 「人間力」は 「己を知る」ことから始まる

VUCA ※とも言われる社会状況、企業統治の透明性を求めるコーポレートガバナンス・コードの導入などにより、経営の舵取りを担う幹部の重要性は高まるばかりだ。そんな中、「経営幹部は『人間力』を高めるべき」と主張するのは、日本大学商学部教授の外島裕氏と、絆人事コンサルティングの野村正憲氏だ。なぜ人間力が重要なのか、また、人間力の高め方などについて両氏に聞いた。


外島 裕氏
日本大学 商学部教授
経営心理学

野村正憲氏
絆人事コンサルティング代表

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株式会社日本能率協会マネジメントセンター
パーソナル・ラーニング事業本部
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※VUCA……Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をつなげた言葉。現代の予測困難な社会経済状況を表している。

経営幹部に必要な「覚悟」

経営幹部の要件とは何だろうか。経営戦略や財務・法務などの知識・スキルはもちろん必要だが、「それ以上に、何よりも『覚悟』が必要」と、人事コンサルタントの野村氏は話す。

「企業における役職者の覚悟は、階層が上がるほど、高いレベルが求められます。ただ、課長、次長、部長くらいまでは、延長線上に少しずつレベルが上がっていくような感じですが、経営幹部ともなると、求められる覚悟のレベルは一気に高まります。それだけに、覚悟が固まっていないまま幹部となり、職責を十分に全うできていないケースがよく見られます」

経営に関する知識やスキルは教育が可能だが、覚悟は自分で固めなければならない。そのためのベースとなるのは「人間力」だという。近年、相次ぐ企業の不祥事を背景に、経営者の倫理観や誠実さを重視した「オーセンティック・リーダーシップ」の考え方も注目されている。

「経営者が誠実で信頼できる人物かどうかを、従業員だけでなく、顧客や投資家など、あらゆるステークホルダーが注視しています。それだけに、人間力を磨くことは、経営幹部としての最大の責務と言えます」(野村氏)

自身の「内面」を理解する

「覚悟や人間力とは、言い方を換えれば、自分が生きていく上で何が大切かを腹に据えるということです」と話すのは、大学で経営心理学を教える外島氏だ。

「経営幹部は、自分のことを理解していることが大切です。心理学用語で言えば『メタ認知』です。自分のことが分からなければ、覚悟も定まりませんし、セルフマネジメントもできません。自分の弱みも含めて、自分のことを分かっている、という心の持ち方が大切なのです」

経営幹部になると、業績や社内のルール、ステークホルダーなど、とかく外に目が向きがちだ。それらはもちろん大事だが、その前提として、自分自身を理解していることが必要というのだ。

「リーダーシップは、これまでは『インターパーソナル(対人関係)』の側面ばかりが注目されてきました。しかし、他者へ影響力を持つには、まず『イントラパーソナル(個人の内面)』の側面を磨くことが欠かせません。例えば、経営幹部にどれだけ知識やスキルがあっても、それだけでは部下たちはその人についていきたいと思わないでしょう。人間的な魅力があるからこそ、その人と一緒に、苦労して難局を乗り切ろうと思えるわけです」(外島氏)

ディレールメントしないために

外島氏は、経営幹部の「ディレールメント(脱線)」の問題も指摘する。

「経営幹部とそれまでの職務とでは、役割も責任も大きく異なります。しかし、経営幹部に就任した人の多くが、前職までの仕事のやり方を続けようとします。そのやり方が、前職までは優秀と評価されたり、高業績に結びついたからでしょう。それが悪い癖になり、経営幹部に求められる新たな仕事のやり方を発揮することができず、結果として“脱線”してしまう人がいるのです」

ディレールメントに陥らず、経営幹部として活躍するためには、どうすればよいだろうか。

「一時期、今までのやり方を捨てて、新しいやり方を身につける『アンラーニング』がはやりましたが、今までの貴重な経験を全て捨てる必要はありません。これまで身につけてきた知識・スキル・コンピテンシーを見つめ直し、どの場面でどのように使ったらよいかを考えること。そして、これまでのやり方では通用しない場合には、過去の経験を応用発展させたり、あるいは新しいやり方を身につけたりなどしていくことが求められます」(外島氏)

内省の時間をつくる

しかし、現実には、忙しい日々の中で自分自身を見つめ直すことは容易ではない。また、経営幹部になると、周囲から指摘や指導を受けることもほとんどなくなる。そのため、外島氏と野村氏は「内省する時間を意識的につくる」ことを勧めている。

「内省する手段はいくつかありますが、中でも有効な方法は、安心できる環境で、利害関係のない第三者とダイアログを行うことです。しみじみと語り合うことにより、自分の生き方や大切にしたい価値観などについて、『ああ、私はこうだな』と実感をもって理解できるようになります」(外島氏)

「例えば、部下に実務を任せられない経営幹部は少なくありません。部下を信頼して任せるべきだということは、頭では分かっているはずなのに、実際にできないのはなぜか。その本当の理由は、本人にも分かっていないことが多く、そのままでは行動を変えることは困難です。そこで、第三者とのダイアログにより、本人の考えや行動の理由を深く掘り下げていきます。そうすることで、自分の真の姿を理解でき、人間力を高めていけるようになります」(野村氏)

両氏の協力を得て、日本能率協会マネジメントセンターでは、こうしたダイアログをもとに経営幹部の人間力を個別に高めるためのプログラム「MY MOTTO」を提供している。プログラムの詳細に興味のある方は、気軽に問い合わせてみてはいかがだろう。

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