セミナー・イベントレポート HRサミット2017 テクノロジー講演 AI(人工知能)を活用した人財育成の姿とは? 〜アダプティブラーニングで効果的・効率的な人財育成〜

AI(人工知能)の発達により、人々の暮らしが変わり始めている。ビジネスにおいてもAI の活用は進んできており、とりわけ人事担当者からはAI による人財育成に関心が寄せられている。日本最大級の人事フォーラムHRサミット2017 で東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)商品統括部 商品企画部の小野慎一氏が行ったAI と人財育成に関するセミナーが注目を集めた。ここでは小野氏がセミナーで語った内容を紹介する。

小野慎一氏
1993年株式会社東芝へ入社。製造業向けシステムエンジニアリング(SE)、BPRコンサルタントを経て、2001年よりeラーニングソリューションの事業責任者として従事。現行製品GeneralistLMにおいては、国内シェアトップクラスのLMSに育て上げる。また2010年より自社内の人材開発部門を兼務し、業務運営の知見もあわせた視点で人材育成のICT化を推進、現職に至る。
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拡大するAI 産業

昨年、メジャー・リーグで108年間優勝から遠ざかっていたシカゴ・カブスの優勝を予測したのは、AIでした。また、ジョージア工科大学には学生をサポートする親切な職員ジル・ワトソンがいて、オンラインで学生の質問に答えていたのですが、実はジル氏はAIだったと大学側が公表して話題となりました。学生側は誰も気づいていなかったんですね。これらの例は、AIが暮らしの中に浸透してきていることを示しています。富士キメラ総研のレポート「AI産業の国内市場予想」(2016年11月)によると、2015年度には1500億円規模の国内AI市場が、5年後の2020年には約10倍の1兆20億円、2030年までには2兆1200億円まで拡大すると予想されています。業種別に見ても、ほぼ全ての業種でAIの導入が倍増することが予想されています。
ビジネスにおけるAI
AIがビジネスの中で果たす役割として、アメリカでは「既存の業務効率・生産性を補完する」との回答が多いのに対し、日本では「不足している労働力を補完する」との回答が多かったことが分かっています。これは日本の労働者人口が減っていることと関係があると思いますが、AIが人の代わりに何かやってくれるのではないかという過度な期待が透けて見えます。しかし、なかなかそこまでは行き着かないのが現状です。日本の意識を人の代わりをするAIという意識から、業務効率の向上にどのように役立てるのかといった意識に変えていく必要があるのではないかと思います。
AIに関するキーワードも、整理する必要があります。ディープラーニング、機械学習=AIではなく、これらはAI技術の中に含まれるものです。
今のビジネスでAIができることは「分類の自動化」が中心で、決してAIが人間の代わりに何かを考えてくれるわけではありません。データを与えてあげる役割は、人が担っているのです。それを効率良くやるためにクラウドソーシングが利用されています。
実際に、各業種がどのようにAIを使っているかというと、製造における予知保全、社会インフラにおける自動補修点検といったリスク回避、流通におけるCS向上、商品のリコメンドなどに使っています。東芝では、アナリティクスAIとコミュニケーションAI「RECAIUS」を開発しており、「RECAIUS」では「日本語会話サービス」を人財育成に使っています。これは自動音声対話でマンツーマンの日本語会話を学習できるもので、例えば中国のスタッフに日本語を学んでもらうといった利用例があります。
人財育成とAI
人財育成とAIの関係は、大きく3つあります。
①AIを開発する人財の育成
AIを開発する人財は、現在でも数万人足りないと言われています。これが将来2兆円規模の市場になった時にどれだけ不足するのか、分かっていません。AIを開発する人財の育成は急務です。
②AIを活用する人財の育成
開発ではなく、活用する人財も不足しています。今までは「会社は人なり!」と言われていましたが、これからは、AIを活用することがビジネスをデザインすることになります。「会社は、AIを活用する人なり!」に変わっていきます。
③AIによる人財育成の効率化これが、今日の本題です。AIによって、人財育成の効率をどう上げていくかという話です。AIを使った人財育成のための『ひとづくり情報プラットフォーム』を構築することをご提案いたします。
人財育成に必要な要素を古くからある「マクレランドの氷山モデル」で表すと、水面上に現れているのは、スキルやコンピテンシー、業務経験、知識であり、これらは管理できます。しかし、それだけでは人の本質をとらえることはできません。水面下にある価値観やモチベーション、性格といったところを可視化することで、人をデータとして写像でき、育成方針に活かすことが可能になります。
『ひとづくり情報プラットフォーム』に入れるインプットは、コンピテンシー診断や、業務スキル、人事アナリシスレポートなどですが、これらの診断は現場に負荷がかかるというのも事実です。今の最新のAIを使ったセンシングでは、日常的にスキルや行動特性の収集ができます。例えば、「RECAIUS」のDEEPDIVEというエンジンを使って、メール、週報などの非定型データを分類し、その中からその人に必要なスキルをピックアップしたり、メールやスケジューラーから、人と人のエンゲージメントを測定したりしています。また、マイク、加速度センサー、Bluetoothを搭載した「スマートバッチ」を付け、周囲の人との距離や会話のトーンを収集します。これは、会話の内容を収取するものではありません。会議の中で使えば、この人とこの人は活発に議論する、この人は特定の人と喋るときに威圧的に声が大きくなるなどといったことが分かります。他にもメールログ、PCログ等のライフログをとって、その人の行動特性を日常的に収集・把握することができます。
こうして貯めたインプットは人材の最適配置に使います。誰がどの仕事に詳しいのか、あるプロジェクトに最もマッチングする人は誰かといったことが分かります。さらに、個人のスキルを分析し、自分はこうなりたい、会社としてはここまでのスキルになってほしいといった要望と、現状のスキルのギャップが明確にでき、そこから育成計画を立てることができます。

アダプティブラーニング
人財を育成するには時間をかけて、じっくり育成することが王道です。しかし、企業内教育ではそうはいかないこともあります。ICTを使ってなるべく効率的に育成したいというご要望を、非常に多くいただいております。そこで提案したいのが、アダプティブラーニングです。
アダプティブラーニングにはさまざまな解釈がありますが、ここでは「学習者の得意・不得意を理解して、最適な教材を自動でお勧めしてくれる教材」のことをアダプティブラーニングとしています。これはアナログの世界で言えばカリスマ講師が行っている個別指導と言えるのではないでしょうか。
企業内教育でのアダプティブラーニングとは「集合研修、eラーニング、動画、テストなど教育コンテンツをオブジェクト化。目標スキルと、現状のスキルのレベルギャップにより、提供する教材内容を変更する」ということになり、そこにAIが関係してきます。第一段階として、教育・研修を集めてオブジェクト化する、“目利き”の時にAIの分類機能を利用して、効率良くタイムリーに登録します。次に「ひとづくり情報プラットフォーム」に入っている属性から、個々の得意・不得意とラーニングオブジェクトを合わせるAIのマッチング技術を活用し、パーソナライズ化された研修をすることができます。
以上のように、AIを活用した人財育成の例の1つとしてアダプティブラーニングをご紹介しましたが、それ以外にも、AIと親和性の高い人財育成に役立ちそうなICT技術をご紹介します。1つめは、VRです。バーチャルならではの質の高い体験により、「分かる」を「できる」に変えることができます。例えば、360度画像を使った避難訓練を疑似体験し、気づきを啓発させることができます。2つめはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)という、主にホワイトカラー業務の効率化・自動化の仕組みで、一例としてはRPAでeラーニングのコンテンツをつくることができます。帰宅前にパワーポイントの教材ネタをフォルダに入れておくと、夜中の間にコンテンツになってLMSに登録までできているということが可能です。これを当社のGeneralistのオプションとして提供していきます。
今日お話ししたAIも人財育成(人間力)も、使えば使うほど価値が高くなります。人財管理ソリューションGeneralistも、使えば使うほど価値が高くなるような新たなご提案をし続けていきます。ご期待ください。
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