セミナー・イベントレポート GLOBAL HR FORUM JAPAN 2017 リンクグローバルソリューション ダイバーシティ新世紀 〜「デジタルネイティブ×グローバル」な「ミレニアル世代」を活かす組織創り〜

「日本企業がグローバル市場で生き残るために、グローバル人事は今、何をすべきなのか?」をテーマに開催された「GLOBAL HR FORUM JAPAN 2017」。その中から、「ミレニアル世代を活かす組織創り」をテーマに、文部科学省「トビタテ! 留学JAPAN」ディレクターの船橋力氏と、その卒業生3 名、ファシリテーターの高津尚志氏(IMD北東アジア代表)によるトークセッションをレポートする。
開催日:2017年8月30日
会場:アキバプラザ(東京都千代田区)
主催:株式会社リンクグローバルソリューション
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求められる人材戦略のキーワードは「コレクティブジーニアス」
多くの日本企業がダイバーシティに取り組んでいるが、中でも重要課題と言えるのが、「グローバル」「デジタル」が当たり前になっている「ミレニアル世代」の能力や発想をどう活かすか、ではないだろうか。その世代の生の声を聞き、今後の組織の在り方を考えるヒントにしようというのが、当セッションの目的である。
ミレニアル世代の代表として登壇したのは、文部科学省が主宰する「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」の3名の卒業生たちだ。同プログラムは、日本を代表する学生の海外派遣を通じて、さまざまなジャンルのリーダー候補、エキスパートの卵を輩出する取り組みである。参加を希望する学生は、自ら留学計画を立て、本プログラムに寄附等の支援を行っている企業の人事担当者が①独自性、②情熱、③好奇心の評価軸で学生を選抜する。これまでの派遣留学生は4000人を超え、渡航先は約100カ国に上る。帰国後も、学生と支援企業が協働してさまざまな課題解決に取り組んでいる。
ディレクターの船橋氏は、社会問題が複雑化し、イノベーションが求められる中、これからの時代に必要な人材戦略のキーワードとして「コレクティブジーニアス」を挙げた。
「一人ひとりの尖った才能を集めて、チームで解決していかざるを得ない時代。求められるのは、トビタテ!の選考要件にもある通り、独自性、情熱、好奇心です。そういう人材を企業の中で、どう活かしていくかが課題になります」
「ミレニアル世代」3名が語る自身の価値観とビジョン
続いて、3人のトビタテ!卒業生が、留学で芽生えた価値観や、これからのビジョンを順に語った。
今年、日立製作所に入社した竹内雄哉氏は、複雑系物理学のメッカであるテキサス大学に留学した。
「世界中から優秀な研究者が集まる中で、『お前は誰で、どんな貢献ができるんだ』と強く求められました。そこから、自分も多様性の一部を担う存在であり、人類の進化に寄与したいという価値観が芽生えました。また、トップクラスの科学者が、平気で自分では解けないと言い、他の人に協力を求めていました。共創して解決する姿勢が印象的でした」
これらの気づきから、帰国後にトビタテ!の有志と始めたのが「越境研究所」。幅広い分野の“尖った”人材が集まり、分野を越えて学び合う。
「重視しているのは、相互リスペクトしながらも、本気でぶつかり合うこと。『お前は俺が持っていないものを持っているはずだ』とリスペクトしつつ、互いの考えを率直に言い合います。それによって常識が変わり、新しい発想が生まれます。会社でも、同期や若手社員と、自分のこれまでや、これからを語り合い、皆で応援し合う場を開催しています」
現在、大阪大学基礎工学部でAI(人工知能)を研究する佐久間洋司氏は、「深層学習」発祥の地であるトロント大学への留学で最新の理論を、シリコンバレーで産業界への応用を学んだ。日本最大の若手AIコミュニティの代表も務める。佐久間氏は、AIの領域において日本は大きく出遅れていると述べたうえで、AIに対する日本と海外の認識の違いを紹介した。
「日本ではAIは単なる一技術という認識ですが、海外では、今後の自社の命運を担うと認識する企業が少なくありません。それを端的に表すのが、AIの博士号を持った人材に対する企業の待遇です。僕の友人にもいますが、初任給が年収1億円を超えます。また、企業に属しながら論文を出版できる環境も求められています。アップルが高額な報酬を提示しても、AI人材をなかなか集められないのは、論文の出版を禁止にしたからだと言われているくらいです」
今年、LITALICOに入社し、発達障害児の教育支援に携わる河合道雄氏は、ハーバード大学のオンライン教材を開発するハーバードXに留学した。目的は、教材の利用実態と開発のマネジメントを学ぶことだ。
「現地で学んだのは、アカデミアを起点としたプロフェッショナルのネットワークです。日本の大学の場合、教材をつくるのは学内の研究員ですが、ハーバードXでは、元テレビ局のディレクター、元出版社の著作権担当者、教材づくりの専門家などと大学教授が協働していました。背景には、教育大学院の存在があり、そこでさまざまな分野の人が集い、学ぶことを通じて多様性のあるネットワークが形成されていました。
もう1つは、グローバルなつながりです。例えば、マラリアの感染症予防のコースは、リアルな講義だと数名しか受けませんが、オンラインで行えば、現地の実践家もアクセスでき、ネットワークを築いて情報交換もできる。良いテーマであれば、物理的な距離を超えて教材をつくれる可能性を感じることができました」
コレクティブジーニアスを活かす組織にするには
4名の話を受けて、会場全体で議論を行った。コレクティブジーニアスによる価値創造で大事なことについて、船橋氏は「トビタテ!では、留学前後の研修で、留学生たちの本音と本気を引き出すようにしている。同様に企業でも、本音と本気を引き出す場をつくらないと、コレクティブジーニアスの掛け算は生み出せないのではないか」と述べた。卒業生からは「ジーニアスは個性。支離滅裂でもいいから、自分はこういう人間なんだと話し合えるところから、新たな発想が生まれる」(竹内氏)、「新しいものを生み出すには、100人のAIエンジニアよりも、1人のトップAIエンジニアを採用すべき。そのほうが人材も集まる」(佐久間氏)、「日本人はコンフリクトを恐れがち。この留学のように、コンフリクトを乗り越えるためのがむしゃらな経験が大事」(河合氏)などの意見が出された。
最後に、本セッションのファシリテーターの高津氏が、ビジネススクール・IMDがまとめた「デジタル時代のリーダーを、非デジタル時代のリーダーと分ける4つの特徴」(HAVE)を紹介し、まとめとした。
①Humble 謙虚さ: 他者からのフィードバックを受け止められる。自分より他者のほうが知っているということを認められる。
②Adaptable 適応力:変化が常だと知っている。新たな情報をベースに考えを変えることは弱みではなく強みである、と受け入れている。
③Visionary ビジョン:短期的な不確実性に直面しても、長期的な方向の感覚を明確に持っている。
④Engagement エンゲージメント:新たなトレンドへの興味関心・好奇心を持ちつつ、社内外の関係者に耳を傾け、彼らと交流し、意思疎通を行う意思がある。
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