日本におけるCSV経営を担う人材に求められるコレクティブインパクト・リーダーシップ

CSV の重要性について理解している企業は多いが、実際にCSV を実践できている企業はまだ少ない。日本能率協会マネジメントセンター(以下、JMAM)は、CSV を推進するうえで欠かせないコレクティブインパクト・リーダーシップを身につける集合研修プログラムを提供し、話題となっている。今回、JMAM コース開発チーム4名に、CSV とコレクティブインパクト・リーダーシップについて、話を伺った。


左から
シニアHRM コンサルタント 中嶋 裕氏
シニアHRM コンサルタント 渡辺京子氏
シニアHRM コンサルタント 蕪木健司氏
チーフHRM コンサルタント 田崎 洋氏

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CSV実践には集団の力が必要

米国ハーバード大学のマイケル・ポーター教授とマーク・クレイマー教授が提唱したCSV(CreatingShared Value)の概念が、日本企業にも浸透しつつある。企業はこれまでのように利益だけを追求するのではなく、社会的な課題を解決し、新たな価値を生み出して広く共有することが求められる(そのことが結果的に利益にもつながる)という考え方だ。CSVを実践していくにはどうすればよいのだろうか。JMAMの中嶋裕氏は、次のように述べる。

「社会的価値と経済価値を両立するということは、簡単なことではありません。特に個人の力で実現することは非常に難しく、集団の力を発揮することで初めてCSVを実践できる可能性が高まると考えています。そのためには、さまざまな人や組織を巻き込みながら、それぞれの強みを生かして社会的価値の創出と自社の利益の追求を行うコレクティブインパクトを起こす必要があります」

ここで中嶋氏が述べるさまざまな人や組織とは、職場内や社内の他部署のみならず、他企業、官公庁、NPOや地域社会など広範囲に及ぶ。

「非常に広い範囲の多様な立場のメンバーで、利害を超えた大きな課題を解決するためには、コレクティブインパクトを引き起こす働きかけができるリーダーシップ、コレクティブインパクト・リーダーシップ(以下CIL)が求められるのです」(中嶋氏)

リーダーシップの在り方

CILを獲得するためには、どのような意識や行動が必要となるのだろうか。これについて、JMAMの田崎洋氏は次のように説明する。

「ポイントは大きく分けて4つあります。『和をもって語り尽くすこと』『自社らしさを理解すること』『教養を実践に活かして自己表ひょうき輝すること』、そして社会の広い場所でリーダーシップを発揮するための基本となる『リーダーシップの考え方の理解』です。この4つを理解し、実践することでCILを発揮できると考えています」

1.和をもって語り尽くす:まず和の意味を再認識する必要がある。和を単に仲が良いことと捉えるのではなく、「和して同ぜず」という言葉にもあるように、安易に同調せずに、協調しつつも主体的な言動が求められると理解すべきである。そのうえで、とことん語り尽くすことがコレクティブインパクトを引き起こすうえでは絶対に欠かせないプロセスとなる。

2.自社らしさを理解する:自社の人材が持つべきものの考え方、ものの見方、感じ方といった「自社らしさ」を再確認する必要がある。さらに、自社らしさを追求していった結果、将来どこへ向かうのかを読む「未来先見」も重要となる。

3.教養を実践に活かして自己表輝する:社会についての理解を深め、相手を尊重する気持ちがなければ、他者と共に社会的課題を解決することなどできない。歴史、文学、科学などの教養を身につけ、まずはCILを醸成する最小単位である職場で相手の立場に立ってコミュニケーションをとる。そのことが、自分自身も輝く「自己表輝」につながる。

4.リーダーシップの考え方の理解:CILは現代において求められるリーダーシップの在り方だが、リーダーシップの基本は変わらない。「役割にこだわらずに“人”として働きかけをする」人を刺激する、考えを統べる、常識化する、「枠組みを活用して働きかける」情報を共有する、方向を指し示す、ルールや基盤を変えられる影響力を持つ─これらの考えや行動と、最低限の用語や知識を身につけておく必要がある。

JMAMの蕪木健司氏は、これらを身につけることの重要性と難しさについて次のように述べる。

「上記の4つのポイントを理解していなければ、たとえ社内であっても部門間での連携すら難しいでしょう。まして社外、官公庁やNPOまで巻き込むとなると、それぞれの考え方や、使っていることばが異なるという場合もあります。そこで通用するCILを身につけるには、まずは研修という小さな場でCILの考え方や発揮の仕方を理解し、それを職場で実践するといった段階を経ていく必要があります」

JMAMでは、これらのポイントを盛り込んで、CILを身につけた人材を育成する場を提供している。それが集合研修プログラム「CILコース」だ。

CILでの学び

CILコースでは、参加者が30年後の自社について語り尽くす。ビジネス環境が不透明な現在、30年後を見通すことは難しいが、その拠り所となるのが自社らしさだ。自社らしさを踏まえて、30年後に自社がどのようになっているべきかを主体的に考え、そのためには10年後、3年後に、会社はどうあるべきかを見つめ直す。このワークには情報収集、仮説立案、個人間・グループ間による相互検証など、発想を広げるための知識と、自分自身のコレクティブな行動が欠かせない。

JMAMの渡辺京子氏は「メンバー一人ひとりが社会への想いを持ち、表現することが大切だ」と述べる。CILコースでは、通常の研修コースと異なり、研修の中で徹底的に語り尽くすことを重視している。また、自分自身への問いかけも深められるように、コース独自の多面診断も開発した。

このコースの受講者は、基本的には部門長以上が対象となるが、実は企業からもっと若い初級管理者クラスにも受けさせたいという声が多いという。自社らしさや社会的な課題について、若いうちに考えさせたいという企業が多いのだ。こうした要望に応えて、JMAMではCILコースのモジュールを提供するような形で短期研修を行うこともあるという。

CILはCSV経営を担う人材を育成するプログラムであると同時に、これからのリーダー育成に必要な内容が盛り込んである。未来を見据え、社内・外の人を巻き込みながら課題を解決できる人材を育むリーダーシップ・プログラムとして、注目していきたい。

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