CSVを題材にした研修を通して リーダーに必要な能力を磨く

グローバルに活躍できるリーダーやイノベーション人材の育成が課題となっている企業は多いのではないだろうか。こうした人材を育成するための方法として今、注目されているのが、CSV(Creating Shared Value)をテーマとしたリーダー育成プログラムだ。CSV が、なぜリーダー育成に最適なのか。同プログラムを提供するピープルフォーカス・コンサルティング(以下、PFC)の松村氏と黒田氏に聞いた。


松村 卓朗氏
代表取締役

黒田 由貴子氏
取締役
ファウンダー

●お問い合わせ先
株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-12-8 ル・グラン原宿
TEL:03-5771-7071
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URL:http://www.peoplefocusconsulting.com

CSVプログラムの有効性

CSVは、2011年にマイケル・ポーター氏が提唱した概念で、「経済価値を創造しながら、社会的ニーズに対応することで社会的価値も創造する」というビジネス手法だ。CSR担当者には知れ渡っている概念だが、近年、国連が「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択したこと、経済の成熟化に伴い従来の市場開拓手法やビジネスモデルでは大きな成長が難しくなっていることから、CSVを経営戦略の根幹に置く企業が増えてきた。

「しかし、看板を掲げたものの、まだその実現には至っていない日本企業がほとんどです。実現のためには、CSVをリードできる人材が不可欠です。これから人材育成部門が取り組むべきは、まさにそうしたCSV人材の育成だと考えています」(黒田氏)

CSVリーダーの育成が、CSVの実現にとどまらず、幅広い意味でのリーダーや経営人材の育成に有効な理由として、黒田氏は次の3 つを挙げる。

1)視座が高まる

リーダー育成におけるニーズとして、「目の前の仕事ではなく、もっと視座を上げて、社外に目を向け、世の中の潮流に敏感になってほしい」という声は多い。世界の社会課題に焦点を当てるCSVは、リーダーが視座を高めるうえで最適な題材といえる。

2)イノベーションを生み出す

CSV事業を実現するには、通常の事業の延長線上ではなく、イノベーティブなビジネスモデルが求められるため、新たな着想の訓練になる。

3)コラボレーション力

多くのCSV事業は、一社単独ではできず、現地コミュニティーや他業種、政府機関、NGO等、幅広い関係者と連携して取り組むことが求められるため、コラボレーション力も磨かれる。

CSVリーダーに必要な能力

では、CSVリーダーにはどのような能力が求められるのだろうか。

「CSVとは社会価値と経済価値を両立させることですから、社会貢献意識とビジネスセンスの2つが必要です。社会貢献意識については、日頃、口にすることを躊躇している、あるいは考えても仕方ないと思っているビジネスパーソンが結構います。そういう人々には、実際に社会課題を抱える現場に触れる体験が有効です。何とかしたいという強い思いが沸々と湧いてきます。また、ビジネスセンスは、従来のビジネスでも求められますが、CSV事業においては従来のものに加えて、次の5つの能力が必要だと考えています」(黒田氏)

・システム思考力による社会問題の構造把握…従来のビジネスはロジカル思考力によって問題が把握できるが、社会問題はさまざまな要因が複雑に絡んでいるため、その構造を俯瞰して各要因の関係性を理解するシステム思考力が求められる。

・共感と対話によるニーズ探求…従来のビジネスではアンケートやインタビュー等でニーズを把握するが、全く異なる立場の人々のニーズ把握には、自身の価値観を一旦脇に置き、現地にどっぷり浸かって共に探求することが求められる。

・セクターを超えた関係者とのコラボレーション…従来のビジネスでは社内の関係者とのコラボレーションで済むところが、CSV事業の場合は社内にとどまらず、現地のコミュニティーや企業、政府、NPOなど、さまざまな関係者とのコラボレーションが必要で、高い合意形成力が求められる。

・既存の枠組みにとらわれない革新的な解決策立案…CSV事業では、既存製品の改良等にとどまらず、思い込みや前提条件を打破する革新的な解決策立案が求められる。

・新しいビジネスモデルやバリューチェーンを構築…CSV事業を実現するには、既存のビジネスにとらわれず、新しいビジネスモデルを構想したり、バリューチェーンを構築したりする力が必要である。

現実の社会問題解決に挑戦

これまで、ファシリテーションや組織開発(OD)をいち早く日本に紹介し、先駆的な人材開発プログラムを提供してきたPFCでは、参加者の社会貢献意識を覚醒させ、CSV事業に求められる5つの能力を体得するための各種プログラムを提供している。代表的な「GIAリーダー・プログラム」は、新興国での体験学習を通じてリーダーシップを開発するプログラムだ。現地訪問前のワークショップでグローバルな社会問題についての見識を広げ、CSVリーダーに求められる発想や考え方のベースを習得するフェーズ1、スリランカを2週間訪問し、現地の人々と向き合い、関係を構築しながら、自社のビジネスで現地にどう貢献できるかを考えるフェーズ2、帰国後に成果をまとめるフェーズ3で構成される。

海外で異文化体験を行う研修は一般的に増えているが、松村氏はGIAの特徴を次のように語る。

「自分や自社はどう社会に貢献すべきなのか、価値観の異なる現地のさまざまな分野や階層の人々とどう向き合うか、そして想いやアイデアを自社の事業を通じてどのように実現させるのか、といったことについて参加者を追い込んでいきます。プログラムを通じて覚醒する人は少なくありません」

なお、現地に出向いての体験学習が難しい場合は、フェーズ1のみを実施することも可能だ。次世代リーダー育成プログラムの1科目として導入している大手企業の例もある。

「従来の標準的なビジネスの考え方だけでは、成長は厳しくなってきています。リーダーとしてさらにもう一段ストレッチするために、CSVは最適なテーマと言えます」(松村氏)

CSVリーダーを育成する企業はまだ少ないが、ファシリテーションや組織開発がそうだったように、10年後には人材開発において当たり前の取り組みになっているかもしれない。

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