セミナー・イベントレポート Global HR Forum Japan 2016 リンクグローバルソリューション トークセッション 日本人のグローバルリーダー輩出に向けて

日本人がグローバルリーダーとして世界で活躍するために必要なことは何か。経営幹部を対象にグローバルリーダー育成を行う世界トップクラスのビジネススクールIMDの高津尚志氏と、将来のグローバルリーダー輩出に向けて、学生の留学を促進する文部科学省官民協働プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」の船橋力氏、そしてリンクグローバルソリューション取締役の日髙達生氏が語り合った。
※「GLOBAL HR FORUM JAPAN 2016」(2016 年10月12日開催)でのトークセッションを編集したものです。
会場:アキバプラザ(東京都千代田区)
主催:株式会社リンクグローバルソリューション
高津尚志氏
IMD北東アジア代表
日本興業銀行、BCG、リクルートを経て現職。金融、戦略、人事各面から、日本企業の国際展開に寄与。
2010年、スイスのビジネススクールIMDに参画。日本、韓国、台湾を担当し、グローバル企業幹部育成の施策構築・遂行に取り組む。
船橋 力氏
文部科学省 官民協働海外留学創出プロジェクト トビタテ! 留学JAPAN ディレクター伊藤忠商事を経て、2000年ウィル・シード設立、代表取締役に就任。2009年、世界経済フォーラムのヤンググローバルリーダーに選出。2012年NPO法人T A B L E F O R T W OInternational理事に就任。2013年より現職。
日髙達生氏
株式会社リンクグローバルソリューション 取締役
2003年リンクアンドモチベーション入社。2012年リンクグローバルソリューションの前身会社に出向。2016年より現職。早稲田大学 産官学連携トランスナショナルHRM研究所 招聘研究員。
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グローバルリーダーとはどのような存在か?
日髙
高津さんにお伺いしたいのですが、IMDではグローバルリーダーをどう定義されていますか?
高津
IMDでは、「複雑で不確かな環境において、舵をとり、組織の変革の旅路を形作り、導くのがグローバルリーダー」と定義しています。たとえばオープンイノベーションとか、コラボレーションを通じたビジネスモデルの再構築など、さまざまな業界、機能、組織を越えていって仕事ができる人。そして組織の変革を実現し、優れた、持続的なビジネス成果を達成することができる人がグローバルリーダーであり、だからこそリーダーとは、企業における地位や職階だけではなく、自分がどんな職業人生を全うしたいのか、という生き方の問題とも捉えています。
日髙
生き方という意味では、船橋さんは、よく若い人方に「まず自分の軸を見つけなさい」というメッセージを投げかけられていますね。
船橋
日本人は、自分の軸を考える教育を受ける機会があまりありませんが、海外に行くと、それが問われます。日本人は、自分の軸が曖昧なまま、良くも悪くも相手に合わせる傾向があるので、どんどん相手に染まっていき、自分を見失う場面をよく見てきました。これからの時代のリーダーには、さまざまな問題を自分で解決するのではなく、人的ネットワークを自ら集め、この多種多様なコレクティブジーニアス(集合天才)をマネージすることによって解決していくことが求められます。その際には、リーダーには何らかのビジョンや軸を持っていることが求められることになりますから、自分の軸を持つことが、ますます重要になってきます。
日髙
高津さんは先ほどグローバルリーダーの定義として「変革の旅路を形作る」という言葉を使われています。これはどのような意味ですか。
高津
リーダーとマネジャーはどこか違うのか、という議論ともつながってきます。リーダーには明確に2つの機能があります。ひとつはアジェンダ(課題)設定やビジョンの提示であり、もう1つはネットワークをつくって人を動かすことです。自分たちがめざそうとする絵を描いて、それに向けて人を動かすことがリーダーの仕事です。マネジャーは任務がきちんと遂行されるよう管理していく仕事です。両方の力が求められることも多いですが。
日本人ならではの強み・弱みとは
日髙
船橋さんは世界経済フォーラム(ダボス会議)のヤンググローバルリーダーに選出されましたが、現地での日本人リーダーのパフォーマンスはどのように映りましたか。
船橋
残念ながら、日本人がグローバルの中で「個」で立っていることは、あまりありません。ダボス会議では、期間中に日本人が外国人をもてなすパーティーを開催します。ところが、私が最初に参加した時は、日本人は皆日本人同士で固まっていて、残念に感じました。日本人は「個」では何かきっかけがないとなかなか積極的に出られないということです。やはり日本人は真面目で、経営者であっても自分から積極的にアプローチできない傾向があります。
高津
最近、日本企業からよく聞くのは、グローバルに人材を登用していくと、日本人がどんどん少なくなっていくという悩みです。日本人が持つ慮る力、場を読む力も大事ですが、外国人に圧倒的に負けているのが発信力やパワーや明快さです。これらが備わっていないと、グローバルな場では大きなハンディキャップになります。日本社会の中では同じレベルを求められていないかも知れませんが、少なくともグローバルな場に行った時には、そういう力を使えるよう自分を鍛えていく必要があると思います。
日髙
逆に、日本人らしさが良い方向に出ることはありますか。
船橋
実は、日本のヤンググローバルリーダーは、ダボスで結構認められています。チームでプロジェクトを立ち上げると、他国のメンバーはみんな発案するだけでやらないのに、日本人チームだけが真面目にやり切って実績をつくっていく。そういうところが信用につながっています。
日本人がグローバルの壁を乗り越えるためには
日髙
日本人がグローバルの壁を乗り越えていくためには、どんなことを身につけるべきだと思いますか。
船橋
日本人は素晴らしいし実力もあるはずなのに、それを発揮できないのは、自己肯定感や自信のなさが根底にあるからだと思います。まず自分や日本の良いところを知って、自信を持つことから始めることが大事です。そして何事も自ら「イニシアチブ」を取り、目標も自分で設定し、自分でリスクを取り「決める」ことが重要です。自分で考えて決めたことなら、難易度の高いチャレンジでもへこたれることはありませんから。僕は「リスペクト・アンド・アクセプト」という言葉が好きなのですが、10代の頃、海外のインターナショナルスクールに入学して、言葉が分からずノイローゼになりかけましたが、野球部に入って活躍したら、ヒーローになりました。このように海外では、違いがあっても、何か1つでも才能が認められれば、仲間になれます。それが、尊重し(リスペクト)、受け入れる(アクセプト)という感覚であり、この感覚を身につけることが大切だと思います。ダボス会議では、私は議論についていけず聞いているばかりでしたが、ある時、「君はリスニング力が素晴らしいね」と褒められました。人の話をよく聞き、相手に合わせるという日本人の特徴を、自分の才能として認めることができると、自信がつき、発言もできるようになりました。
高津
昨今、グローバルリーダーには「これができないといけない、あれもできないといけない」などと、求められるもののハードルがどんどん上がってきています。ハードルが上がると、自己肯定感が弱く、自信のなさが根底にある日本人は、そこで止まってしまう。私はひとまず思い切って、一度、海外、グローバルな「場」に出てほしいと思っています。実際にそこでやってみて、自分はどれくらい話ができるのか、自分のことを表現できるのか手ごたえを感じてもらいたい。そのように自覚するプロセスが重要で、人は気づくと自然に行動が変わってきます。そのためにも、特に人事の方にお願いしたいのは、そういう場に送り出す前に、本人が「いったい自分は何を学びたいと思っているのか」を明確にさせる取り組みを入れてほしいですね。
日髙
日本人グローバルリーダー輩出のカギは、「いかに自信をつけさせるか」にありそうですね。ありがとうございました。
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