企業事例 興銀リース 女性活躍推進プロジェクトの発足で企業風土改革を開始

みずほフィナンシャルグループの総合リース会社である、興銀リース。1969 年に設立され、製造業向けの設備機器リースを中心に発展した同社は、女性が活躍できる職場にしていくために、「女性活躍推進プロジェクト」を発足させ、企業風土を変える活動を開始。それをサポートしたのが、日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)のコンサルティングである。

興銀リース
代表取締役専務
●お問い合わせ先
株式会社日本能率協会マネジメントセンター
〒103-6009 東京都中央区日本橋2-7-1
東京日本橋タワー9 階
TEL:03-6362-4802
URL:http://www.jmam.co.jp
※ご相談は弊社URL「お問い合わせフォーム」もご利用ください。
働き方の選択肢を増やしたい
興銀リースでは、女性活躍推進プロジェクト「チームSAKURA」の活動を2014年よりスタートさせた。チームは経営層に「女性が活躍できる企業風土の醸成のための提言」を最終目標に、ワークショップなどを重ね、仕事や働き方に対するさまざまな価値観の違いを共有しながら組織の課題の掘り起こしとその解決策を検討し合う。1チームにつき活動期間はおよそ8カ月。これまでに2期の活動を行った。そしてJMAMでは、プログラムの立案やプロジェクトのファシリテーション、研修の実施など、最終的に経営層への提言まで全面にわたりプロジェクトをサポートした。
興銀リースは、なぜこのような取り組みを始めたのか。代表取締役専務の倉中伸氏は、こう語る。
「当社では、男性総合職が中心の企業風土が連綿と続いてきました。総合職の中には、もちろん女性社員もいます。しかし、有給休暇を消化しづらい雰囲気や、“総合職=営業”という固定観念が根づいていたことなどから、特に家庭を持つ女性にとっては能力を発揮しづらい環境にあったといえます。また、その様子を見て女性社員が総合職に挑戦することを尻込みしてしまうようでは、組織にとって大きな痛手となっているのではと考えたからです」
同社には一般職社員もいるため、担当するサポート業務の必要性を否定するつもりはないと倉中氏は説明する。
「しかし、各自の望むライフスタイルに応じて働き方を選ぶ自由度が、当社は小さいのではと感じていました。それにはまず、女性社員がより活躍できるための風土を築く必要がありました」(倉中氏、以下同)
今回、プロジェクト制にしたのは、「社員たちが主体的に考えた施策こそ納得感があり、社員たちに新しい風土として受け入れられるはず」だと考えたからだ。
第1期は一般職だけのチーム

こうした背景から、第1期のチームSAKURAは、女性一般職社員のみでスタートした。彼女たちは従来、性別による役割分担に違和感をおぼえる場面が最も多かったからだ。例えば、複合機のコピー用紙の補充やシュレッダーくずのごみ捨て、給湯室にある冷蔵庫の掃除など、本当に彼女ら“だけ”がやるべき仕事なのだろうか。あえてそうした小さな慣習の見直しから始めた。
とはいえメンバーたちの日々の業務は、指示を受けて行うものが多く、人前でのプレゼンテーションはもちろんのこと、自分たちで課題を見つけ、意見を持ち、議論し合うなど、ほぼ初めてのことだった。
そこで、このプロジェクトでは、図のように、ワークショップと並行してプロジェクトマネジメントやファシリテーション、プレゼンテーションの各研修をプログラムに盛り込んだ。またプロジェクト全体のファシリテーターとしてJMAMのパートナー・コンサルタントが入り、適切なタイミングでフォローやアドバイスを行った。
「パートナー・コンサルタントの角幸子先生には、ファシリテーションだけでなく、メンターの役割もお願いしました。社員同士のつながりだけでは甘えが生まれてしまいますが、外部の方が入ることで、ほど良い緊張感を保つことができました」
最初は戸惑っていたメンバーたちも、ワークショップを重ねるうちに積極的に意見を述べ、主体的に取り組む感覚を徐々につかんでいった。
機会の提供が能力発揮に
チームSAKURAのメンバーは、女性活躍推進に精力的な他の企業にも出向いて情報交換を行うなど、熱心に取り組んだ。そして経営層への提言では、先に述べた性別による役割意識によって生まれる業務分担の存在と、その改善策を述べた。
役員の多くは提言内容に強い関心を示すと同時に、一般職社員である彼女たちが行ったプレゼンテーションの質の高さに驚いたという。
「役員からは、『ここまでできるんだ』という声が上がりました。おそらく“事務の人”などという線引きで、一般職社員を見ていたのでしょう。彼女たちにはこれまで自ら発信する機会がなかっただけで、チャンスさえあれば、より多彩な能力を発揮できるのです」
提言づくりでは、研修や角氏の助言が効果を発揮した。相手の理解を得るために必要なアプローチや時間配分についてなどの具体的なアドバイスが、経験値の少ないメンバーたちの支えとなった。
多様さが集結した第2期
チームSAKURA第1期の終了後、2015年には第2期をスタートさせた。メンバーには第1期の女性一般職社員2名に加え、女性総合職社員2名、男性総合職社員2名で構成した。総合職と一般職の混成に加え、女性だけでなく男性の視点を交えることで、より充実した議論が期待できると考えたからだ。
そして第2期では、チームのサブリーダーがワークショップのファシリテーターを務めた。
「ワークショップ当日にはファシリテーターと進行の確認のランチミーティングを行うなど、角先生には熱心にご指導いただきました」
実際に、多様なメンバーが揃ったことで、女性活躍に対する価値観や考え方だけでなく、プロジェクトの進め方そのものにも想定以上にいろいろな意見が生じた。
「当社では、これまで職種横断型のプロジェクトはほとんどありませんでした。経験や立場の異なるメンバーが集まれば、進行のハードルも高くなります。ゴールに向けてどのようなストーリーを描いていくか、そのすり合わせに時間をかけました。」
ワークショップでは、チームのメンバー構成や状況に応じたJMAMコンサルタントからのアドバイスが役立った。例えば、意見を求める際は先輩社員より先に若手のメンバーに声をかけて遠慮なく発言できる状況をつくる、考え込んで場が硬直するようなことを避ける誘導の仕方など、具体的な助言が有意義な議論を実現させた。
そうした紆余曲折を経ながら、第2期メンバーも経営層への提言を完成させた。提言には主に、残業時間や有休取得率の見える化を図り、女性総合職を中心に柔軟な働き方の促進につなげるべきということを盛り込んだ。ツールとして同業他社と比較したデータを用いるなど、取引先への提案を行う総合職メンバーならではの創意工夫も見られた。
女性活躍推進は社員全員の課題
チームSAKURAの活動を進めるにあたって、配慮したことがある。それは、「女性活躍推進は社員全員で行うもの」という意識づけである。
「活動は通常業務と兼務になるため、周囲の認知と協力が必須です。そのため、メンバーには人事発令や任命式を行いました。また個人の目標管理においてもプロジェクト活動を実行項目に入れるなど、取り組みやすい環境をつくりました」
また社員へのヒアリングやアンケートの実施、支店への積極的なコンタクトなど、新しい風土づくりのために性別に関係なく多くの社員を巻き込んで進めることを意識した。さらにイントラネットで活動内容を定期的に発信し、第2期ではその頻度を増やして関心度向上に努めた。
こうした活動が実を結び、全社向けのプロジェクト活動報告会には男女を問わず多くの社員が訪れた。
「予想以上に男性社員からの反応があったようです。提言への賛同意見やチームSAKURAへの応援メールも多数寄せられ、社員たちの高い関心がうかがえました」
取り組みの成果は、数値にも表れた。隔年実施の社内意識調査では、「男女の区別なく仕事ができると思う」といった、女性活躍に関する項目でスコアの大きな伸びを見せ、社員の意識の変化を汲み取ることができた。
「しかし、取り組みはまだ始まったばかり。企業風土を変えるわけですから、5年、10年とじっくり腰を据えて進めるべきと考えています。チームSAKURAに対して『女性社員たちが何かやっているな』という程度にしか考えていない男性社員もまだいると思います。また、女性社員自身が多様な働き方への転換にまだ抵抗を感じている部分もあるため、そうした課題にも取り組んでいければと考えています」
2016年にはダイバーシティ推進室が発足し、チームSAKURA第3期に向けて準備中とのこと。このように、興銀リースの女性活躍推進がスムーズにスタートアップし、成功させた裏には、JMAMによるバックアップが存在したのである。
参加者の声

チームSAKURA 第2期に参加
福田純平氏 コーポレート営業第二部 課長代理
上司から打診された時は「なぜ男性の私が…?」と驚きましたが、女性とは違った視点や営業職からの意見もプロジェクトに役立つのではと思い、参加を決意しました。
第2 期は意図的に多様なメンバーが召集されましたが、考え方や価値観、パッションの違いに驚きました。そしてこれらを取捨選択し、役員への提言にまとめ上げるのは一筋縄ではいかず、半年間で120 時間以上もの膨大な時間を費やしました。また互いの意見の交わりから生じる化学変化は面白く、充実感がありました。
プロジェクト活動を通じて、多様なメンバーで仕事をするのは大きな意味があり、企業や個人の成長を促す重要なポイントだと実感しました。まずは女性社員のチャレンジ精神を尊重し、活躍を後押しする仕組みづくりが必要だと思います。
役員への提言ではプレゼンテーターを務め、直後に経営陣からの前向きな回答を受けることができました。
一方で、社員の中には他人事に思う人や変化を嫌う人もいます。社内全体の風土改革が最重要であり、じっくり時間をかけて取り組む必要があると感じています。
今後もチームSAKURA のOB として、女性活躍の取り組みに積極的に関わっていきたいと思います。
ダイバーシティ推進室が新たに発足
人事部ダイバーシティ推進室 室長 夏井恵理氏/室長代理 櫻井雄介氏/室長代理 小峯直子氏

興銀リースでは、今年度より人事部にダイバーシティ推進室を設置。2014 年から2 年間続いたチームSAKURA の流れを受け継いだ形だ。
ダイバーシティ推進室室長の夏井恵理氏はチームSAKURA の活動を、事務局の立場で見続けてきた。
「ダイバーシティ推進室に与えられたミッションは、柔軟な働き方をするための制度改革や、能力を発揮し幅広く活躍できるための取り組みなど、多岐にわたります。まずは第1期と第2期のチームSAKURA からの提言項目の実現化に向け精査し、優先順位をつけて整理を行っています。制度を整えるだけでなく、また女性だけに閉じることなく、多くの人を巻き込むためにはどうすれば良いのか。まだまだ道のりは長いと思っています。長期ビジョンで今ある課題から着手していきますが、最も重要なことは社員一人ひとりの意識改革だと思っています」(夏井氏)
櫻井雄介氏は推進室唯一の男性メンバーである。
「チームSAKURA 第1期では、プロジェクトワークの経験のないメンバーが一定の成果を残したことに対し驚きました。性別や肩書だけで能力を判断するのは非常にもったいないこと。それを実証できたのではないでしょうか」(櫻井氏)
小峯直子氏は、チームSAKURA第1期はメンバーとして、第2期は事務局として関わった。
「プロジェクト活動を通し、少しずつ社員の意識が変化している今、この動きを止めることなくダイバーシティ文化の確立をめざし、課題に取り組んで参ります」(小峯氏)
推進室では女性活躍推進を中心に、社内のさらなる意識改革に臨む。
本記事に関するお問い合わせはこちら〔PR〕
- ●株式会社日本能率協会マネジメントセンター
- ●〒103-6009 東京都中央区日本橋2-7-1 東京日本橋タワー9 階
- ●TEL:03-6362-4802
- ●URL:http://www.jmam.co.jp
- ●※ご相談は弊社URL「お問い合わせフォーム」もご利用ください。