グローバルなモノづくり企業の現場を強くする「Monodzukuri Test」とは?

国家検定「機械保全技能検定」の指定機関であり、「自主保全士」資格の主催団体でもある公益社団法人日本プラントメンテナンス協会(Japan Institute ofPlant Maintenance、以下JIPM)。JIPM は、2014年度よりグローバル企業の現場における人材育成を支援するためタイ語の「Monodzukuri Test」を実施し、さらに英語版の作成も進めているという。Monodzukuri Test の意義や実施状況について、JIPMの鈴置智、角田英政の両氏にお話を伺った。

鈴置 智氏
公益社団法人 日本プラントメンテナンス協会
専務理事

角田 英政氏
公益社団法人 日本プラントメンテナンス協会
普及推進部

●お問い合わせ先
公益社団法人 日本プラントメンテナンス協会
〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-2-2
住友商事竹橋ビル15階
TEL:03-5288-5001(代表)
E-mail: M-TEST@jipm.or.jp
URL:https://www.jipm.or.jp

現場を強くする自主保全士

現在、タイのモノづくり企業において、JIPMが開発した「MonodzukuriTest」が注目を集めているという。この「Monodzukuri Test」を理解するためには、JIPMの歴史と、TPM(Total Productive Maintenance)活動の中から生まれた「自主保全士」について知っておく必要がある。

JIPMは1961年、日本能率協会内に発足した「設備管理部会」が1969年に改組した「日本プラントエンジニア協会」が母体となる、歴史ある組織だ。1971年にTPMを提唱、1981年には社団法人日本プラントメンテナンス協会として認可され、2012 年には公益認定を受け、公益社団法人となった。産業界における生産・設備管理・保全などの活動に寄与する取り組みを推進・支援し続けている。

1984年度に開始され、毎年約3万人が受検する国家検定「機械保全技能検定」も、保全員の技術と地位向上を目的にJIPMが国に働きかけて実現したもの。2015年度からは、JIPMが指定試験機関として試験問題作成や実施運営に携わっている。

さらにJIPMは2001年度から「自主保全士」の資格認定制度をスタートさせた。強い現場づくりには、実際に設備を担当するオペレーター自身による自主保全活動やロス排除などの改善活動が欠かせない。そこでJIPMはオペレーターの知識や技能を高め、それを一定の基準で評価し、要件を満たす者には資格を付与すべきだと考えた。それが「自主保全士」の資格だ。自主保全士に必要な要件は次の4つである。

1.異常発見能力:異常を異常として見る目を持っていること

2.処置・回復能力:異常に対して正しい処置が迅速にできること

3.条件設定能力:正常や異常の判定基準を定量的に決められること

4.維持管理能力:決めたルールをきちんと守れること

自主保全士には、自主保全活動だけではなく生産活動の基礎知識も必要だ。それらの範囲を決め、教育レベル・体系を定めたうえで、自主保全士を1級・2級に区分。JIPMが提供するテキストで学習し、検定試験、または通信教育の受講によって資格を取得できる。現在までに累計で12万人以上の自主保全士が誕生し、現場の生産性・品質向上、故障低減、さらにはコスト削減などに寄与している。

世界で求められる自主保全

こうした自主保全の考え方が、グローバルで求められるようになってきている。例えば、タイ。なぜタイなのか、JIPMの専務理事である鈴置智氏は次のように説明する。

「日本の自動車メーカーは、以前からタイを重要な生産拠点として拡大してきました。その後、メキシコ、ブラジルなど世界中に生産拠点が広がる中で、タイに日本の保全員を送り込むことが難しくなっていったのです。また近年、タイに導入される設備は最新鋭なものも多く、その設備を使いこなせる人、保全できる人の育成が急務となっています。そのためにも現地での自主保全活動が重要となっているのです。そこで、タイにいる現地の担当者に、日本の自主保全の考え方を身につけてもらいたいというニーズが高まってきました」

日本の製造業がグローバル化する際に、いかに現地の人材を育成し戦力化するかは大きな課題であるが、JIPMの会員企業の中で、それが特に顕著な地域がタイだったのだ。

こうしたことを背景に、JIPMは自主保全士の資格試験をタイ語で展開する「Monodzukuri Test」の開発に着手した。2013年のことだ。

タイ語のMonodzukuri Test

2013年当時、鈴置氏と普及推進部の角田英政氏は実際に何度もタイに赴き、会員の日系企業を中心にヒアリングを開始。すると事前に日本で考えていた以上に、現地での製造部門の管理・監督者や保全員の育成ニーズが高いことがわかった。

「知識や技能を高めるとジョブ・ホッピングの恐れがあるという声もありましたが、それ以上に“今教育しないと、今後のグローバル競争下では生き残れない”という声をよく聞きました。また、現地で自主保全の内容を学ぶためのテキストは、英語のものと日系企業が使っている日本語のもののみで、タイ語で書かれた現地の人材用のテキストがほとんどなかったのです」(角田氏)

帰国後、早々に自主保全士のテキストをタイのニーズに合わせて編集し直し、タイ語に翻訳する作業に取り掛かった。内容は日本での自主保全士のものとほぼ同じで、自主保全士の4つの要件や、必要な科目が網羅されたものになっている。そしてタイ語のテキストは日本語版と同じページ割で作成され、日本語版を使った講師が開いたページと、タイ語版で学ぶ現地の人材が開くページが対応するよう工夫が施されている。また、日本のモノづくりの精神が伝わるよう、タイトルには「Monodzukuri」と日本語をそのまま使用している。

資格試験は2014年度より開催している。2年目の申し込みは事業所数、申込者数とも前年を上回り、日系企業だけではなくタイ現地の事業所数も増えてきている。

英語版テキストも完成

「Monodzukuri Test」のテキストは、資格試験を受験する企業の社内教育用としてはもちろん、受験を目的としない講義の中で使用されるケースもある(テキストのみの購入も可能)。現場担当者向けのタイ語テキストがほとんどないタイでは、幅広い内容を網羅した「Monodzukuri Test」のテキストが、まさに人材教育にうってつけだと高い評価を得ている。

「実はこの4月に、全く同じ内容の英語版テキストが出来上がりました。英語圏での『MonodzukuriTest』実施のご希望もいただいていますが、ある企業担当者から英語・日本語・タイ語で試験を実施し、全世界の工場を比較したいといった要望を受けて作成したものです」(鈴置氏)

英語版テキストの完成によって、日本の自主保全の知識や技能がさらに世界へと広がっていきそうだ。現場の人材教育に注力したいと考えるグローバルなモノづくり企業から、大きな注目を集めることは間違いないだろう。

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