ライフワークス 誌上×対談 ミドル・シニア社員が会社で活躍するためには

自分の価値を常に問い続けよう

野木

今の日本企業は、従来の終身雇用やピラミッド型の組織が保てなくなり、雇用期間も延長される中で、多くのミドル・シニア世代が働き方について悩みを抱えていると感じます。こうした状況についてはどのようにお考えですか。

藤村

大企業と中小企業で事情は異なると思います。中小企業に働く人たちにとって、転職は割と当たり前のことです。転職のたびに、企業から「あなたは何ができますか」と聞かれていますから、自分の能力について把握しています。一方、大企業の場合は定年まで勤める人が今でも多いですから、「あなたは何ができますか」と問われる機会はあまりありません。とはいえ、競争環境は刻々と変化していますから、大企業でも、ある部門を閉じたり、あるいは他社のある部門を買収したりするなど、ダイナミックに動いており、そのスピードに従業員はついていく必要があります。しかし、普段から自分に何ができるのかを考えていないと、その変化についていけず、会社の“お荷物”になりかねません。

したがって、今、働いている人たちに求められているのは、「自分はどうすれば会社に貢献できるか」という、社内での自分の価値を常に問い続けることだと思います。大企業の従業員は、これまで「5年後、10年後にどうなっていたいですか」と聞かれても、「それは会社の決めることだから」と思ってきました。しかし、それでは変化についていけなくなります。普段から「もし会社がこういう分野に進出した場合、自分には何ができるか」ということを常に考えていると、変化に対応しやすくなると思います。

野木

ただ情報のアンテナを立てているだけでなく、自分で考えることが大切なんですね。

藤村

そう思います。しかも、1人で考えるのは限界があるので、他の人と議論するのがいいと思います。例えば、50歳のキャリア研修などに参加すると、同じような経験をしてきた仲間が集まります。そこで、それぞれの考えを発表し合い、議論することで、自分にはない考えに触れて刺激を受け、より広く深く考えることができます。

自分を会社に売り込むくらいの意識を持とう

野木

当社はまさにそのようなキャリア研修を提供しているのですが、以前は、これまで会社に貢献してきたことに対する“ご褒美”の意味合いがあったのが、最近は、変化が激しい中で、自分の役割を自らつくっていかなければならない状況へと変わってきています。

藤村

大企業で働いている人々を見て感じるのは、“くれない族”に陥っている人が多いことです。「会社が自分の仕事を用意してくれない」「自分の能力を生かしてくれない」という他力本願の姿勢です。これでは、これからの時代は生き残っていけません。会社はまさに生死をかけて競争しているわけですから、その中で、「私ならこういう貢献ができます」「私のこの能力を使ってみませんか」と売り込むくらいの意識が必要です。そうでなければ、会社は義務的に雇用する形になりかねませんし、仕事をする本人も面白くないでしょう。普段から情報を集めて、予期しない事態にも対応できるような準備をしつつ、これまでの経験を生かして「自分はこういう分野でこういう仕事ができるぞ」という意識を常に持ってほしいですね。

頼まれたことは何でも引き受けよう

藤村

仕事を頼まれたら、全て引き受けましょう。頼まれるということは、頼りにされているということですから、頼まれるうちが花なんです。何でも引き受けると、得意なもの・不得意なものがあります。不得意なものについては、人脈を生かして、分かる人に教えてもらって仕上げるようにします。すると、自分の知らないことを知るわけですから、能力開発にもなります。

野木

ミドル・シニア社員は、考える機会を設けて、それを他者と議論して深めていくこと。そして、仕事では頼まれたことを断らず、これまで培った人脈を生かして新たな分野にも対応していくことがポイントということですね。

藤村

何歳になっても、常に新しいことに挑戦することが大切だと思います。新しい技術や業界の動向などに常に関心を持ち、さまざまな情報に接しておく。そして、できれば、それについて誰かと議論できるとより良いと思います。

重要なことは、自分の「売れる能力」をどうやって維持するかを考えることです。シニアには、これまでの豊富な経験があるので、できることはたくさんあると思います。でも、その中には時代に合わない能力もあるはずです。どんなに高い能力を持っていたとしても、その需要がなくなれば、お金を稼ぐことはできません。ですから、まだ十分生かせる能力が何かを見極めることが大切です。そのためには、将来どんな能力が売れるのか、予測が必要です。その予測は、当たることもあれば、外れることもあるでしょう。外れたら、また別のことを考えればいいのです。そのような視点から、世の中の動向を見ていくことが大切だと思います。

この先、どんなに技術が進歩しても、必ず必要とされる能力が２つあります。1つは問題を発見する能力です。うまくいかない状況に対して、何が問題かを指摘できる力があると、非常に重宝されます。そのためには、他者との議論を通じて、多面的なものの見方を身につけることが必要です。もう１つは、人の力を結集する能力です。問題が明確になったら、その解決に向けて、みんなを奮い立たせて、力を合わせていく必要があるからです。この２つの能力があれば、どこに行っても大丈夫です。

野木

そういう意味では、まさに我々の提供しているキャリア研修は、多様な価値観に触れ、議論できるという特徴がありますので、ぜひ多くのミドル・シニア社員に活用いただきたいと思います。