経営・事業に貢献する人材育成の仕組みをつくるための3つのポイント
経営・事業に貢献する人材を育成するには、育成の仕組みづくりが必要となる。自社にとって有効な仕組みにするためには、どのような点に気をつけるべきだろうか。HRM 領域のコンサルティングに携わる日本能率協会コンサルティング(JMAC)HRM 革新センターのチーフ・コンサルタント、村上剛氏に聞いた。
村上 剛氏HRM 革新センター
チーフ・コンサルタント
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人材育成の「土台」を固める
さまざまな企業の人材育成の仕組みづくりを支援してきた村上氏は、企業の人材育成施策を決めるプロセスを見ると、「実」のない施策を行っているケースが多いと指摘する。
「よくあるのは、年間の研修体系を考える際、すぐに情報収集に入り、どんなものが良いかを選ぶという形です。中には『前年度とは違うことをしよう』というように、施策を変えることが目的となっている場合もあります。これでは、せっかく施策を実施しても十分な効果は期待できません。『実』のある人材育成施策を実施するには、まず人材育成の『土台』を固める必要があります」
「土台」とは、「人材育成理念・全社人材ビジョン」「具体的人材像」「人材育成マネジメント・サイクル」の3つを指す。
「人材育成理念とは、企業における人材育成の考え方を整理したもので、それに基づき会社全体でどのような人材をめざすかを示したものが全社人材ビジョンです。全社人材ビジョンは象徴的なものなので、育成の現場では、事業や職種ごとにブレークダウンした具体的人材像を定めます。その人材像をめざして計画的に育成していくために、人材育成のPDCAルールを定めるのが人材育成マネジメント・サイクルです。これらを明確にすることによって、初めて『実』のある人材育成施策を実施することが可能になります」
経営・事業戦略とつなげる
人材育成の「土台」、特に具体的人材像は、経営・事業戦略と密接に関わるだけに、経営・事業戦略とのつながりが重要だ。しかし、実際には人材育成が経営・事業戦略と結びついていないケースが多いという。
「理由として、人事部門が経営・事業戦略のことをあまり把握していない面もありますが、そもそもの役割として、人事部門がライン部門の育成に深入りしないことになっているところもあります。当然、企業によって役割分担は異なりますが、経営・事業戦略が見えないまま『土台』をつくっても、実効性のないものになってしまいます」
具体的人材像は事業戦略によって変化するため、実際には各事業部門でつくる必要があるものの、人材開発部門はそれを促し、支えていく必要がある。
「外資系企業では、人材開発の専門家であり、事業内容にも詳しい『ビジネスパートナー』という役割が存在し、このような事業と結びついた人材育成の仕組みづくりを行っていますが、日系企業では、このような役割があまり確立されていません。また、企業によっては人事部門のリソースが限られているために、本格的な仕組みづくりにまで手が回らないケースもあります。そこで、我々のようなコンサルタントが支援を行っています」
経営・事業戦略とのつながりと、人材育成の「土台」固め──この2つのポイントを踏まえ、JMACでは企業の人材育成の仕組みづくりを支援している。ここでいう人材育成の仕組みとは、前述の「土台」固めをしっかりと行ったうえで、それに基づいた人材育成施策を企画・実行し、人材育成を計画的・継続的に推進する枠組みのことだ。
例えば、OJTの場合、まずOJT担当者を教育し、現場で具体的人材像をめざしたOJTの実践フォローを行う。また、新人のOJTだけでなく、新任管理職などの階層別OJTも支援する。Off-JTや自己啓発はもとより、ローテーションやキャリア開発、次世代リーダーやグローバル人材などのテーマに沿った育成も支援する。
経験学習の場も重要
人材育成施策を「実」のあるものにするためには、もう1つポイントがある。それは学びの場の設定だ。
「せっかく効果的な人材育成施策を提供しても、受け手である社員に学ぶ姿勢や学ぶ力がなければ十分な育成効果は得られません。そこで大切になるのが、意図的な経験付与と経験学習ができる場の設定です」
JMACでは[課題設定→経験→振り返り→対話→課題設定]という学びのサイクルの定着を支援している。この中で特に「対話」を重視しているという。
「課題設定で何を学ぶかを明確にしたうえで経験し、振り返って自分自身で教訓を抽出し、それについて周囲の人たちと対話をして再度振り返り、その教訓を昇華させ、蓄積していくことを大事にしています。対話で他者に教訓を伝えることによって、新たな気づきが生まれ、今後に生かせる、より実践的な教訓が抽出できるからです」
JMACではこのような学び方の研修も提供している。
現場主義と事業との連携
JMACのコンサルティングには2つの特長がある。1つは“現場主義”である。
「もともとJMACのコンサルティングは生産現場からスタートしているため、HRMの領域でも“現場主義”のモットーで臨みます。我々は基本的に、人材育成の仕組みを人材開発部門だけでつくらないようにしています。現場のマネジャーやキーパーソンを巻き込むことにより、地に足のついた、“使える”育成施策の実現を支援します」
もう1つは、技術・生産・営業など、各事業領域のコンサルタントとの共同体制が可能なことだ。人材育成の仕組みづくりには、事業部門との連携が不可欠である。その点において、生産や技術などの各事業領域のコンサルティングも行うJMACには、人事に特化したコンサルティング会社にはない強みがあると言える。
コンサルティングといえば調査から企画、導入までの全てを委託する形が一般的だが、最近では、人材育成の仕組みづくりを社内で自立的に行いたいという企業も増えている。
JMACではこのような要望に応え、さまざまな視点やフレームワークなどを提供し、社内の担当者の成長を支援するケースも多い。経営・事業戦略に貢献できる人材育成を実現するうえで、JMACは企業の心強いパートナーになりそうだ。
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