ケース4 イオン労働組合 組合員を含む従業員の働きがいを高めるべく 「働くことの志」「生きることの志」を高める
イオングループは、世界小売業ランキングトップ10 に入るという「グローバル10」を長期目標に掲げ、強固なグループ経営体制構築を目指している。そして、イオン労働組合が進める従業員の意識改革も、その改革を支える力となっている。経営側とは“緊張感を持ちつつ互いに補完し合う”というイオン労組の意識改革は、「従業員が幸せになる働き方とは何か?」を問うことから始まり、やがて「働きがいを高める」という中期ビジョンに基づく事業活動を提供するに至っている。
現実を正しく直視しそこから見えてくるもの
「組合員の労働組合離れ」。そんな言葉が聞かれるようになって久しい。この問題に直面し、有効な活動指針を見出せないでいたイオン労働組合執行部は、95 年、約1 万2,000 名の組合員を対象に意識調査を行った。目的はもちろん、[現在の組合活動についてどう感じているか] を探ることである。
その結果は、まさに“現実を映しだものとなった。「組合にかかわって何かをしたい」という人の割合は、回答者中25 %を下回った。「組合離れ」を、そのまま表した数字だったといえる。
しかし、それを単に「組合員の意識低下」といった言葉で片づけなかったところから、イオン労組のチャレンジは始まった。[私たちの活動が、働く人の求めるものからずれていた。この数字はその結果だと考えたのです]と、中央執行委員長の新妻健治氏は振り返る。その証拠に意識調査からは、「自分か求めるものと一致するなら、組織に積極的に帰属し、その活動に参加していきたい(組織帰属意識)」と考える組合員の姿も明らかになったのだ。
意識調査から明らかになった「組合員がかかおり求めるもの」は、次の4項目に集約される。
① 自分の能力を発揮したい
② 視野を広げたい
③ さまざまな人と交流したい
④ 辰み事の相談に乗ってもらいたい
見落としてはならないファクター
しかし、忘れてはならないことがある。それは、組合員の雇用を確保し、労働条件を維持・改善していくという、労働組合の基本機能である。
この点についても、近年の状況変化は周知の通りであろう。高度経済成長期には、雇用確保と労働条件の維持・改善は、労少なくして手に入った。ところが経済が停滞する現在にあっては、企業の生産性を慟く者自ら生み出していかなければならない。この視点から自分たちの職場を見直した時、「働きがいを阻害し生産性向上を阻害する要因が、たくさんあることに気がついた」と、新妻氏は振り返る。